まんがで解説した初級者向け詰将棋問題集。全ての漢字がルビ付きで、こども対応。
本書は、さまざまな分野のこども向け入門書シリーズである「学研まんが早わかり入門シリーズ」の一つ。シリーズ中で将棋本は計3冊あり、そのうちの2冊目。学研まんがひみつシリーズの方は、こどものときにずいぶんお世話になったっけ…。
本書のレイアウトは右図のような感じ(クリックで拡大します)。易しい1手詰からちょっと難しい7手詰まで、まんがを使って、正解手順と失敗手順を詳しく丁寧に解説していく。
このコンセプトは非常に面白いし、最初はかなり期待をして読み始めたが、気になる点やおかしな点がたくさん見つかって、がっくりしてしまった。
気になる点を挙げておく。
(1)誤植・誤用が多い。
p50 ×「早づみの例」 → ○「駒余りの例」
裏表紙 ×「きみはどう打つ?」 → ○「きみはどう指す?」 ちなみに持ち駒はなし。
p57 ×「正解例」 → ○「正解の手順」 正解は一つなので“正解例”は変。“失敗例”と混同?
p124 ×「問題5正解」 → ○「問題8正解」
(2)盤面・棋譜が見づらい。
盤面、棋譜ともに右図のような「二文字駒」の駒形を使っている。「駒の形を使っているのでわかりやすい」とのこと。これだけでも少し慣れた人には見づらいのだが、駒が小さいのでよけい見づらい。「竜王」⇔「竜馬」⇔「桂馬」は何度も見間違えた。「打」を書く必要がないところでも書いてあるし、逆に「不成」と書くべきところで書いてなかったり。
(3)初級者向けにしては難しい。
1手詰〜3手詰はともかく、5手詰〜7手詰では難しいものもあった。特に伊藤果好みの銀がよく動く問題は、初級者にはかなり難しいと思う。盤面もごちゃごちゃしたものが多い。
(4)詰将棋のルールの適用の仕方がおかしい。(※わたしの勘違いかもしれませんので、そのときは遠慮なく掲示板で指摘してください)
・たとえばp54
一手づめ練習問題(2)。(→)
作意は▲3一角成まで、1手詰。失敗例として「▲3一龍△1二玉▲1一龍△2三玉▲3三角行成でもつむよ。」「あら、でも一手づめにならないからだめね。」とあるが、これは迂回手順ではなく余詰めなのでは?解答者側の失敗なの?
・p101 七手づめ練習問題(2)。(→)
作意は▲2二銀右不成△1二玉▲1一銀成△1三玉▲1二成銀△同玉▲2二桂成。これが初級者には難しい、というのはいったん置いておこう。
p105に失敗例(3)として「▲2二銀左不成△同角▲同銀不成△1二玉▲2一角の早づめ。五手づめじゃ失敗だ!」とあるのだが、「7手詰なのに5手で詰むのはおかしいから失敗」というのは変なのでは?これで詰むのなら、これが最短手順で正解ということになる。さらにこれは「▲2二銀左不成に△1二玉で不詰めなので失敗」というのが正しいのでは?
また、同じ問題で失敗例(4)として「▲2二銀右不成△1二玉▲1一銀成に△同角とすると▲2二桂成で詰みなので失敗」とあるが、失敗というより早詰めの変化だというだけでは?
・p117 実力問題(5)は3手詰。(図面は省略)作意は▲5四金△同龍▲5六金までで、詰め上がりが「イ」になる。変化として▲5四金△6五玉▲6四金打も正解。ここまでは本文に書いてある。ところが下の欄外に
「この問題では「イ」という形の正解を要求しています。だから、「イ」の形にならないものは、作者のねらいに反するので、厳密な意味での正解とは認められません」
工エエェェェェ(゚д゚;)ェェェェエエ工
そんなの初めて聞いた…。本当? |
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……と、ツッコミどころ満載だった。本当に伊藤果が監修してるのだろうか?問題と解答を提供しただけなのでは、と思ってしまう。
冷静に見れば、問題はわずか31問で、解説もすごく詳しいわけでもない。なんだかすごく残念。わたしの中の「学研まんが神話」は崩壊しました……orz(2009Jun17)
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