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■「将棋世界」誌の付録:1998年

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表紙 タイトル・著者・発行 内容 備考
次の一手集
未知の分野に挑戦
定跡次の一手
−相振り飛車−

安西勝一
1998.12(2)
相振り飛車の次の一手問題集。

基本的には▲向飛車vs△三間飛車のオーソドックスな形を扱う。先手の立場だけでなく、先手に隙があるときの後手の立場での咎め方を問う問題も多い。

No.1〜No.10 ▲向飛車△三間飛車の序盤
 No.3 ▲6七銀省略を咎める(△3六歩▲同歩△同飛〜△6六飛)
 No.4〜No.7 早い▲4八玉を咎める(△3六歩〜△5五角)
 No.9〜No10 早い△3四飛を咎める(▲矢倉へ組み替え)
・No.11〜No.18 △4四歩〜△4三銀型
(相腰掛銀になりやすい)
 No.11 先手の無理な矢倉狙いを咎める
 No.12〜No.13 ▲1五歩は成立するか
 No.14 ▲3三角成〜▲2五桂(飛角両取り)は成立するか
 No.16 歩のタダ取り▲4五銀に注意(角を素抜かれる筋)
・No.19〜33 △5四歩〜△5三銀型
(後手は△5五歩と突く形を主眼とする)
・No.34〜39 ▲向飛車+金無双(or矢倉)△三間飛車+穴熊


まだ相振飛車で積極的に美濃囲いを狙う時代ではないし、攻めは中央志向なので、2018年現在ではこの形にはなりにくいとは思う。

ただし、相振飛車の基本の組み方の考え方や、序盤の様々な落とし穴、手筋などがたくさん詳しく解説されているので、読んで損はないだろう。
 
中田章道短編詰将棋集 PART4 詰将棋集
中田章道短編詰将棋集 PART4

中田章道
1998.12(1)
9手詰オンリーの詰将棋問題集。タイトルからは分からないが、9手詰限定である。

問題図には、ヒントなし。解答は、図面1枚、解説約100〜220字。あまり詳しくはないので、変化を自分でしっかりと考えられる人向け。

本書の詰将棋には「ささやかな趣向」(はしがきより)が仕込まれている。
以下ネタバレ↓↓ (見たい方は反転させてください)

「ささやかな趣向」とは、玉の詰め上がり場所が1一〜1二〜1三〜…〜1九→2一〜…と「81格巡り」をしていること。ただし、No.39までしかないので、最後は5三までとなる。このことはNo.20の解答で明かされ、「賢明な読者はお気づきと思いますが」とあるが、私は全く気づきませんでしたorz 「なんか中段玉、入玉形が多いなぁ…」とは思ったんですが。

そうそう、本書では問題図での玉の位置は、通常(一段目〜三段目)が22問(56%)、中段玉(四段目〜六段目)が7問(18%)、入玉形(七段目〜九段目)が10問(26%)となっており、全体の半分近くが中段玉以上なので、苦手な方はこれを機に克服を(笑)。

なお、「全体的にはやさしい構成」(はしがきより)とあるが、これは詰将棋作家としての謙遜であって、「難解作ではない」くらいの意味。ひと目で解けるような問題はほとんどなく、9手詰としてはLv.4〜7くらいだと思う。

マイルールの「3分考えて何も閃かなかったら解答を見る」では、5割ちょっと解けて、2割くらいは筋は合ってたけど変化が詰められなくて、残り3割は解けなかったパターンでした。(2017Jan26)
 
次の一手集
定跡次の一手
振り飛車党必読 攻めるツノ銀中飛車

沼春雄
1998.11(2)
「攻めるツノ銀中飛車」を解説した本。

No.1〜No.19 基礎編 (比較的きれいに攻めが決まる展開)
No.20〜No.39 実戦編 (4局。利を少しずつ拡げるような展開もある)

中飛車には様々な作戦があるが、本書の戦法は、以下のような特徴がある。

・角道を止め、左辺の▲7七角-▲6七銀-▲7八金型をすばやく作る。
・左辺は美濃囲いよりも優先。▲3八玉型や▲4八銀型早囲いで済ますのもあり。
・左辺が出来たらすぐに角交換を挑む。〔右図〕
・角交換後、5筋歩交換して、▲4六角で飛のコビンを狙ったり、8筋を逆襲したり。
・角交換を拒否されたら、5筋歩交換して浮き飛車にして、石田流に構えて軽く指す。


なお、玉型が薄くなりがちなのが不安要素であるが、▲4六角を打ったときに▲3六歩〜▲2八角と角の利きを維持できる利点もある。

ゴキゲン中飛車が登場する前夜の時代であるが、現代の▲中飛車に通じる指し方なので、バリエーションの一つとして読んでおく価値があるだろう。
 
電光石火の詰み 詰将棋集
電光石火の詰み

関屋喜代作
1998.11(1)
7手詰オンリーの詰将棋問題集。タイトルからは全く分からないが、7手詰限定である。

問題図には、ヒントなし。解答は、図面1枚、解説約260字。解説の1/3前後は作者のコラムが入ることが多い。作品の感想や将棋の上達法から、作品とは全く関係ないエピソードまでいろいろだが、「次は何を言ってくれるんだろう」的な期待感がある。

本書の詰将棋は簡素な形が多く、いかにも易しそうで、「思わず解いて見たくなる形」が多い。しかし実際は、有力手がたくさん目につき、エアポケットに陥りやすい。

答えを見ると案外優しいようにも思えるが、7手詰としてはやや難しめの問題が多いと思う。特にNo.1〜8くらいまではなかなか解けなかった。

あえて言えば、「邪魔駒消去」が多い感じなので、その意識を高めておくと少しは解きやすいかも。

本書で易しい方の問題と、難しい方の問題を1題ずつ挙げておこう。No.35は実戦形の手筋モノなので、少し慣れていれば易しく、7手詰Lv.3くらい。No.38は4x4マスで狭いが、変化も多く、3手目が見えにくい。7手詰Lv.8くらいと思う。(2017Jan19)
 
定跡次の一手 定跡再確認!! 矢倉▲3五歩早突き戦法 次の一手集
定跡次の一手
定跡再確認!!
矢倉▲3五歩早突き戦法

所司和晴
1998.10(2)
矢倉▲3五歩早突き戦法を解説した本。(戦法名の命名は所司)指され始めたのは1990年ごろで、いろいろな場所で戦いになるのが特徴。

〔左図〕のように、▲3七銀を上がらずに▲3五歩と歩交換を図る。素直に△同歩だと、1歩を手にしながら角を捌く、手順に玉を囲える、右銀を好位置(▲3六銀)に配置しやすいなど、先手にメリットが多い。なので、〔左図〕から△6四角▲1八飛で〔右図〕がプロの基本図になる。


昔は▲1八飛が悪形と見られていたが、飛先不突き矢倉は2筋に飛がいなくてよいので、見直された。

〔右図〕の局面は手が広く、△3五歩、△8五歩、△5三銀、△7三角、△7二飛、△9四歩、△3一玉などがある。

本書では、△3五歩と△8五歩の変化を中心に、先手が△6四角を目標にする指し方をメインに扱う。角を目標に、▲7五歩や▲8六歩など矢倉側の歩を突き上げる筋が多い。

1998年当時は、▲3七銀戦法の次に多い作戦だったそうだ。2017年現在では、プロではほとんど指されていないが、特に先手が不利だという訳ではなかったと思う。確か、▲4六銀-3七桂の方が、玉が堅くて攻撃力もあるので主流になったはず。後手の反発策や急戦策でその前提が崩れたので、再び本作戦の復権もあるかもしれない。(2017Sep24)
 
必至問題集
読みを鍛える
必至問題39 PART5
1手必至・3手必至

佐藤大五郎
1998.10(1)
1手・3手必至の問題集。実質的な難易度は初段以上くらい。

No.1〜No.20 1手必至
No.21〜No.39 3手必至


先に解いたPART6と比べて、1手必至でも悩まされる問題がやや多く、少し難易度が高く感じた。特に詰み筋が結構長いものや好手を要求されるものもあって、一筋縄ではいかなかった。

一方、3手必至はそんなにウンウン考えなくても解けた印象で、むしろとっつきやすかった。

制限時間1分で誤答してしまった問題は、1手必至は5問、3手必至は4問だった。

毎度のことながら、桂香がタップリな問題もいくつかあったが(No.8、14、39など)、今回はそれよりも「好手筋で解けるとなんだか嬉しくなる問題」が多めだったように思う。No.29〔右上図〕がその代表例。実戦でこんな寄せが決まったら気持ちいいだろうなー。
 
大五郎の痛快5手7手 PART2 詰将棋集
大五郎の痛快5手7手 PART3

佐藤大五郎
1998.09(2)
5手詰・7手詰の詰将棋問題集。前作(1998年2月号付録)から7か月ぶりの登場。

No.1〜20 5手詰
No.21〜39 7手詰

問題図には、ヒントなし、手数表示なし。
解答は、図面1枚、解説約160〜200字で、失敗手・変化にも触れており、まずまず詳しい。

5手詰には中段玉や入玉形がときどき登場する。

No.21〔右図〕は、最後の変化の詰み形が見えづらくて、かなり苦戦させられた。

全体的に、詰み形がイメージできるかどうかで難易度が大きく変わる感じがした。詰将棋に慣れていない人には難しく感じるかもしれない。慣れてくれば、「5手詰にしては難しい問題だと思う」(p38)などと書かれていても、それほどではない。(2017Aug29)
 
次の一手集
イナズマ流 次の一手

森けい二
1998.09(1)
実戦次の一手問題集。森野の実戦を題材に、主に中終盤から寄せ・詰みまでの次の一手を出題。

局面の絶対的な正解手ではなく、「私(森)らしい手を考える」のが解答の条件。「森らしい」というのは、明記されてはいないが、「攻めても受けても勝てそうなら、攻めの手を選ぶ」ということのようだ。

同じ実戦から数問が一組になっているものもある。内容を簡単に列挙してみよう。


(表題はわたしが勝手に命名)
No.1〜4 凌ぎながら寄せる
No.5〜6 銀を逃げずに勝負形に持ち込む
No.7 玉の早逃げ
No.8 凌ぎの玉捌き
No.9〜12 切れ筋からの勝負手
No.13〜15 角を逃げずに利かす
No.16〜17 金を逃げずに遊び駒を働かせる
No.18〜20 ギリギリで捌く
No.21 玉側の端を逆襲
No.22〜24 玉側の端を逆襲
No.25〜26 受けて持駒を補充する
No.27〜28 飛を逃げずに攻める
No.29 角を逃げずに利かす
No.30 必至をかける
No.31 弱点を狙う
No.32 相手の攻めを遅らせる
No.33 必至をかける
No.34〜35 玉の退路を塞ぐ
No.36 飛を逃げずに利かす
No.37 と金攻め
No.38 強く攻める
No.39 攻めながら自玉を安全にする


以上のように、「○○を逃げずに攻める(利かす)」という問題が多い。イナズマ流を目指すなら、攻められているときも何か利かす手はないかを常に考えるようにしよう。

なお、本書で一番カッコいいと思ったのがNo.15〔右上図〕。さっきの「利かす」ではなく、即詰みですが、実戦でこんな手が出せたらメチャクチャ気持ちいいだろうなぁ。(2018Aug02)
 
次の一手集
初段への近道!!
定跡次の一手
野獣流四枚落急戦策

泉正樹
1998.08(2)
四枚落ちの次の一手問題集。

様々な駒落ちの手合いで、速攻主体の新定跡を発表している野獣流から、今回は四枚落ちバージョン。大きく分けて3種類の戦法を解説している。

●No.1〜No.10 急戦桂跳び
野獣流のオリジナル戦法。単純・速攻・破壊力あり。ただし、完璧に指しこなせるなら立派な有段者かも。

〔概要〕
・1筋の歩を飛で切り、浮き飛車に構える。
・▲1七桂〔右図〕〜▲2五桂〜▲1三桂成と突撃。
・桂を捨ててから▲1二歩でと金作り。
・最終的には飛を成り込む。

単純で覚えやすいようだが、速攻の半面、1手の差で攻めが不成立になる恐れがある。本譜では〔右図〕の1手前で、上手が右辺の守りとして△7二金を入れているが、緩手の可能性がある。この1手のために左辺の守備が遅れたように思う。

●No.11〜No.17 突撃棒銀
従来からある四枚落ち▲棒銀戦法。他書(たとえば赤本)にもほぼ似た筋が載っている。

〔概要〕
・角道を開け、飛先の歩を切り、1筋を伸ばして、棒銀を進出する。
・1筋を突き捨てて、▲1二歩の垂れ歩。
〔右図〕から▲1四銀△1三歩に▲2三銀成!と突撃。
・と金〜▲1三香成から飛の成り込みを狙っていく。

駒を捨てても、「と金製造+上手の歩切れ」でカバーするのは[急戦桂跳び]と共通の思想。

●No.18〜No.39 ドリブル銀
下手▲棒銀に対して、上手が△3三金-△3二玉と全力阻止に来た場合。これも赤本などに載っているが、本書では棒銀以外の攻めを狙う。

〔概要〕
・▲3六銀のまま、角道を確保。〔右図〕
・▲1七桂〜▲2五桂と活用して、端を清算して桂を入手する。
・4筋攻めに切り替える。
・銀は▲4五銀と使いたい。ここで威張るのが良い。

二段攻撃、三段攻撃を行う本格的な戦法で有力。ただし本譜の、〔右図〕から△5二金は悪手の可能性が高い(この金を目標に攻めが成立する)ので、鵜呑みにせず、考え方を吸収したい。具体的には、〔右図〕からしっかり囲ってから、本譜の筋を実行すればよいだろう。


全体的に、二段〜三段クラスの力が必要のように思えるが、もともと四枚落ちと二枚落ちにはそれほど大きな差はない(上手の立場で見ればかなりの差だが)。本書の戦法が「指しこなせそうだ」と思えたら採用してみるとよいだろう。

(2018Aug09)
 

浦野真彦詰将棋集

浦野真彦
1998.08(1)
浦野真彦七段(当時)の詰将棋作品集。

浦野といえば『○手詰ハンドブック』シリーズにが有名で、超短手数の秀作を多く発表しているイメージが強い。あとは、正月特番の握り詰めなどか。しかし、作家色の強さも持っている。

本書は、浦野の「詰将棋作品」を39代集めた一冊である。

詰将棋問題は、手数順で、同手数なら盤面の駒数が少ない順に並んでいる。難易度順ではない。

No.1 5手詰
No.2 7手詰
No.3〜No.4 9手詰
No.5〜No.10 11手詰
No.11〜No.17 13手詰
No.18〜No.27 15手詰
No.28〜No.34 17手詰
No.35〜No.38 19手詰
No.39 21手詰


・「約半分は新題」とのことだが、残りはどこかで発表済みなのか、依頼を受ける前までに作り溜めていたという意味なのかは不明。
・小6で作ったものから、看寿賞短編部門受賞作まで。

・No.4〔右上図〕は浦野の色紙愛用作とのこと。比較的スッキリしたコンパクト作品。
・No.38〔右下図〕は浦野自身の本書ベスト作。

・実戦形は多め。「形の良い」ものを好むようだ。
・アクロバット作品はやらないそうだ。
・「○○を発見した時に詰将棋作家は一人ほくそえむのである」(p6)など、詰将棋作家のこだわりや愛に満ち溢れた解説になっている。『○手詰ハンドブック』シリーズとはだいぶ違う浦野がみられる。
・本書の「約1/3は合駒問題」(p62)。当時の愛用パターンは「合駒を中心に軽い手順でまとめる」(p52)こと。また、当時の好みは「形良く紛れ多い」(p58)だそうだ。

現時点(2018年時点)でも浦野の詰将棋単行本が出ていないようなので、「浦野作品」を堪能したいならマストアイテムの一冊。

(2018Aug11)
 
定跡次の一手
手筋の宝庫!!
定跡次の一手 二枚落二歩突っ切り戦法

北島忠雄
1998.05(2)
二枚落ち・下手▲二歩突っ切り戦法の定跡書。

二枚落ちでの下手の二大戦法は「二歩突っ切り」と「銀多伝」で、どちらも勉強になる定跡だが、実際に指しこなすとなると一長一短ある。本書の「二歩突っ切り」は、攻めと守りの態勢を整えたら、あとは攻め続ける戦法となる。

「二歩突っ切り」の流れは以下の通り。

・4筋の位取り
→右銀で位を安定させる
→3筋の位取り
→3筋の歩を飛車で切って、中段飛車(▲3六飛)に構える
→玉型をカニ囲いに整える
→9筋(▲9六歩)を突いておく
→駒組み完了、攻撃開始。駒交換は積極的に行う。


本書ではおおむね3〜5手ごとに1問出題されているが、途中の指し手が省略されていることが多いため、チャートを書き起こしてみた。

No.1〜No.34 定跡編
二枚落ちの初手より
△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩
△3二金▲4八銀△5二玉▲4七銀△6二金▲3六歩
△7四歩▲3五歩△2二銀▲3八飛△6四歩▲3四歩
△同歩▲同飛△3三歩▲3六飛△6三玉▲3七桂
△7三金▲5八金右△6五歩▲7八金△6四金▲6九玉
△7三桂▲6八銀△8四歩▲9六歩△9四歩▲4六銀
△8五歩〔右上図・分岐点〕
├▲3五銀
|├△7五歩▲同歩△同金▲7六歩△7四金▲4四歩
||△同歩▲同銀△同銀戦t根同角△5三銀▲2六角
||├△4四歩…(ジリジリ駒得する)
||└△4三歩…(最後は華麗に必至がかかる)
|├△5五歩▲4六銀△5四銀▲5六歩
||├△同歩…
||└△6六歩▲同歩△5六歩▲6七銀△2四歩▲5五歩
|| ├△同銀…
|| └△同金…
|└△1二香▲5六歩△3一銀▲4四歩…
└▲5六歩△7五歩▲同歩△同金
 ├▲3五銀…(従来の定跡)
 |  (※「従来」が何かは不明。少なくとも[大観定跡]や[赤本定跡]ではない)
 └▲5五歩…(本書の推奨。[赤本定跡]も同様)
NO.35〜No.39 実戦次の一手


なお、本書の内容は、序盤の手順などに細かい違いはあるものの、ほぼ「赤本定跡」(『【決定版】駒落ち定跡』)に内包されている。興味のある方は、細かい見解の違い(「○○の方がオススメ」程度の違いだが)を比較してみるのも面白いだろう。

(2018Aug17)
 
次の一手集
ドラマチック次の一手
プロの華麗な妙技の競演!!

田丸昇/編
1998.05(1)
プロの妙手を解説した本。1998年3月号付録『アンビリーバブル次の一手』(プロのポカ集)の続編。

田丸が見てきたプロ公式戦のうち、1964年から1995年までの将棋から妙手をピックアップ。次の一手形式で考えるようになっている。後手の妙手でも「便宜上先後逆」を採用せず、盤面は先後そのまま。

(「○○編」は私が勝手に付けました)
No.1〜No.4 升田幸三編(1964年〜1975年)
No.5〜No.8 大山康晴編(1978年〜1987年)
No.9〜No.20 いろいろ編(1982年〜1993年)
No.21〜No.24 NHK杯編(1975年〜1987年)
No.25〜No.31 珍しい手・戦法編(1980年〜1993年)
No.32〜No.34 合駒編(1989年〜1993年)
No.35〜No.39 攻防の一手編(1989年〜1995年)


登場する手は、寄せ、受け、実戦的な勝負手、軽手、厚み、詰み、詰めろ逃れの詰めろなど、好手・妙手なら何でも。

戦法的なものだと、No.3で「相掛かりで後手が角道を止める新手法(当時)」や、No.24の「ひふみんが珍しく飛車を振った」、No.26の「矢倉戦での△鳥刺し作戦」、No.27の「対居飛穴・四間飛車▲4八飛戦法」などがある。また、No.30の「横歩取りで△2五歩で飛を呼ぶ手筋」のように、当時は新手だったが今日では当たり前のように使われているようなものもある。

昭和中期〜平成初期の将棋をざっくり眺められる一冊。

(2018Aug23)
 
次の一手集
徹!底!研!究!!
定跡次の一手
新・相掛かり▲3八銀戦法

佐藤紳哉
1998.04(2)
相掛かりの戦術解説書。

普通の相掛かりでは、互いに飛先を伸ばし合って、角頭を金で守り、7手目に▲2四歩と先手が飛先交換を行う。

本作戦では、飛先交換を保留して(7手目▲3八銀)、後手に先に飛先交換をさせて飛車の引き場所を見てから、先手は態度を決めるというもの。先手は、[相浮き飛車]か[相引き飛車]に持ち込みたい。

いわゆる「後出しジャンケン戦術」である。

初手より
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金
├▲2四歩…
(従来の相掛かり)
└▲3八銀 〔右図〕
 ├△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩
 |├△8四飛
 ||├▲6八玉△7二銀▲3六歩△3四歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛…
 |||
(→相浮き飛車で軽快に指す将棋へ)
 ||└▲9六歩△7二銀▲4六歩△3四歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛…
 ||  
(→相浮き飛車・相腰掛銀へ)
 |└△8二飛▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛…
 |  
(→相引き飛車で▲棒銀になり、先手がちょっと得)
 └△7二銀→[両端を突き合い]→▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛!…
   
(→端の突き合いがあれば、先手が先に飛交換しても▲2五飛!で手になりそう)

この考え方は、近年(2012年以降)になって広まったことが『相掛かりの新常識』(2018)などに書かれているが、本書は1998年。著者のサトシン(当時デビュー1年目)が三段時代に愛用していたものの、他に指す人はいなかったが、1997年の王将戦七番勝負(▲谷川△羽生)で指されたことから、プロでチラホラ見られるようになったとのこと。

ただし、そこから約15年は▲引き飛車棒銀が主流で最有力視されていたため、この作戦があまり注目されていなかった。サトシンは見る目がありましたね!

もちろん、現在はもっと先まで研究が進んでいるが、「相掛かり・後出しジャンケン戦術」の原点として、本書を読んでおくのも面白い。

(2018Aug21)
 
次の一手集
定跡次の一手 四間飛車vs右四間飛車
急戦から穴熊まで

小倉久史
1998.03(2)
主に△四間飛車vs▲右四間飛車を次の一手形式で解説した本。

駒組み・仕掛け・終盤まで、四間vs右四間のさまざまな局面を出題。分岐形式ではないので、チャート化は無理でした。

No.1〜No.2 序盤の駒組み
No.3〜No.11 舟囲い▲2六歩型、1筋突き合いあり〔左下図〕

 ⇒先手良し
No.12 舟囲い▲2六歩型、1筋突き合いなし
No.13 舟囲い▲2六歩型、▲1七桂型
No.14〜No.20 舟囲い▲2六歩型、△1二香型〔右下図〕

 ⇒難解だがやや先手指しやすいか

No.21〜No.24 左美濃▲2六歩型
 ⇒▲3六歩〜▲3七桂が早いとリスキー。
No.25〜No.33 居飛穴▲2六歩型vs△急戦
 ⇒・△6五銀と銀交換を挑むのが有力。
  ・先手は居飛穴を目指すなら、右辺の手数を省略すべき。
  ・先手は穴熊が完成するまでは戦いを避ける。
No.34〜No.36 ▲四間飛車vs△右四間模様
 ⇒△飛先省略右四間にさせたくないので、▲7八銀より▲6八飛を優先。それでも△6四歩なら▲6五歩と即反発。
No.37〜No.39 ▲右四間vs△四間飛車での即反発
 ⇒先手勝ち。△四間での即反発は不可。

仕掛けは、手順だけでなく、形の急所を覚えよう。端歩など、わずかな違いが大違いとなる。

終盤は、美濃崩しの手筋が頻出。手筋本で覚えたものが、一局の中ではこうやって使われているんだな、と感じやすい。

No.34〜No.39の「即反発」の順は、右四間を扱った本でも載っていないことが多いので、特に四間飛車で右四間に困っている人は覚えておくと得。

(2018Aug30)
 
次の一手集
定跡次の一手 先手三間飛車VS後手持久戦
先手から動く!

堀口一史座
1998.02(2)
▲三間飛車vs△持久戦指向の戦いを解説した本。

先手側の作戦は、「▲急戦向飛車」と「▲石田流への組み替え」の二つ。 

No.1〜No.2 ▲三間飛車の序盤
 ・後手が持久戦志向とみたら▲6七銀と上がる。
No.3〜No.21 ▲急戦向飛車への転回

 ・後手が持久戦志向とみたら▲6七銀と上がる。
 ・▲7八金と締めたら▲8六歩と即開戦
 ・△8五歩と飛交換を拒否されたら▲6五歩と角交換狙い
⇒ただし後手に正確に対応されると上手くいかなさそう。8筋が収まったら持久戦にするのを推奨。
 ・後手は居飛穴にこだわらず、左美濃にすべき。
No.22〜No.39 ▲石田流本組への組み替え(▲5七角型)
 ・石田流に組めれば、対居飛穴も面白く戦えそう。

〔チャート〕 ※( )内は推測手順。
▲7六歩△8四歩▲6六歩△3四歩▲7八飛(△8五歩
▲7七角△6二銀▲6八銀△4二玉▲4八玉△3二玉)
▲3八玉△3三角▲6七銀
[急戦向飛車編]
├△2二玉▲8八飛△1二香▲7八金△1一玉▲8六歩…
└△5四歩
 ├▲8八飛△2二玉▲7八金〔左下図〕
 |△3二銀▲8六歩△同歩▲同飛△8五歩▲8八飛
 |△7四歩▲9六歩!
 |├△5二金右?▲9七桂!…
 |└△9四歩
 | ├▲9七桂△7三桂▲7五歩…
 | ├▲6五歩△8六歩!
 | |├▲3三角成…
 | |└▲5八金!…
 | └▲2八玉△5二金右▲3八銀(持久戦で一局)
[石田流への組み替え編]
 └▲7五歩△2二玉▲2八玉△1二香▲3八銀△1一玉
  ▲6八角△8四飛▲7六飛△2二玉▲7七桂△3一金
  ▲5八金左△5一金▲5六歩△4一金右▲5七角△3二金右
  ▲1六歩△5三銀▲1五歩△4四銀〔右下図〕
  ▲7四歩△同歩▲6五歩
  ├△8二飛▲7四飛△7三歩
  |├▲7六飛△5五歩!…
  |└▲8四飛…
  └△8三飛!…



全体的に難易度★3〜4で、狙い筋が実現する展開から、互いに対策を出し合うところまで出ている。この戦型における基本知識となっており、実戦ではこれらの変化を念頭において工夫を出し合うことになるだろう。基本の攻め手筋や受け手筋もたくさん出てくるので、▲三間飛車を指したい人にはオススメ。

(2018Sep03)
 
大五郎の痛快5手7手 PART2 詰将棋集
大五郎の痛快5手7手 PART2

佐藤大五郎
1998.02(1)
5手詰・7手詰の詰将棋問題集。

No.1〜20 5手詰 難易度★3〜★3.5
No.21〜39 7手詰 難易度★3.5〜★4.0

問題図には、ヒントなし、手数表示なし。
解答は、図面1枚、解説約160〜200字で、失敗手・変化にも触れており、まずまず詳しい。

5手・7手としては、やや難易度高め。並べ詰めをLv.1、5手・7手の難易度MAXをLv.10とすると、Lv.4〜8といったところ。5分以上考え込まされる問題もチラホラあった。

ときどき、桂や香が並びまくっていたり、△1一桂や△2一香などの不自然な配置がちょこちょこあるのが「大五郎流だなぁ」という感じがする。(2017Jan12)
 
次の一手集
定跡次の一手 “矢倉党の”陽動振飛車退治

富岡英作
1998.01(2)
△陽動振飛車への対策を解説した本。

矢倉の5手目▲6六歩に対して現れたのが△陽動振り飛車作戦。▲6八銀と▲6六歩の形が、対振り飛車では形が良くないでしょう、というのが後手の主張で、狙いは「なんとなく作戦勝ち」。考え方としては昔からあるものの、定跡化は進んでいない。

本書は「先手の立場から、△陽動振り飛車への対策」。ポイントとしては、

・(できれば)「どこかの位を一つ取ることが急所」(p14)
・△8四歩を咎めたい。
・陽動振り飛車は居玉の時間が長い。
・早すぎる6手目△3二飛には相振りにして先手良し。
・6手目△5四歩▲5六歩△4二銀には▲中飛車が有効。角交換要求や、高田流もある。
・▲5八金右を見てから△6四歩には、2筋の歩突きを急ぎ、さらに▲7七銀〜▲7九角で△向飛車に限定させる。さらに強くの▲6八玉〔左図〕で形を決める。△2四歩の反撃は大丈夫。
・後手の角頭が弱くなるので、早繰り銀で攻める。
・持久戦に持ち込めたら、手損でも居飛穴を目指すのが有効。


〔チャート〕
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲6六歩
├△3二飛…
└△5四歩▲5六歩
 ├△4二銀
 |├▲5八飛
 |└▲4八銀△5三銀▲5七銀△3二飛▲6七銀
 | ├△1四歩…
 | └△7五歩…
 └△6二銀▲4八銀△4二銀▲5八金右△6四歩▲2六歩
  △6三銀▲2五歩△3三角▲7七銀
  ├△4四歩▲7九角…
  └△5三銀▲7九角△2二飛▲6八玉!〔左図〕
   ├△2四歩…
   └△6二玉▲7八玉△7四歩▲3六歩△5二金左▲3七銀
    △7二玉▲4六銀△4四銀〔右図〕
    ├▲3五歩△同歩▲同銀△同銀▲同角
    |├△7五歩…
    |├△5一角▲3八飛
    ||├△3二飛…
    ||└△4九銀…
    |└△3二飛▲4一銀
    | ├△5五角?!…
    | └△3一飛…
    ├(どこかで1筋の突き合いを入れて)
    |▲3五歩△同歩▲3八飛△3二飛▲3五銀
    |├△5一角…
    |└△同銀…
    └▲3五歩…
・△7四歩省略型には持久戦から居飛穴



△陽動振飛車が分かりやすく解説された貴重な一冊。特に△向飛車に限定させる指し方は、どうやったらよいか分からなかった人には福音となるので、ぜひ読んでいただきたい。

(2018Sep05)
 


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