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■アップセット・ボーイズ 明日葉高校将棋物語

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アップセット・ボーイズ(上)
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ちくま文庫 や 45-2
アップセット・ボーイズ
明日葉高校将棋物語
上巻
[総合評価] B

絵:B
ストーリー:B+
構成:A
キャラ:B+

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【著 者】 柳葉あきら
【出版社】 筑摩書房
発行:2014年3月 ISBN:978-4-480-43151-6
定価:950円 398ページ/15cm
アップセット・ボーイズ(下)
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ちくま文庫 や 45-2
アップセット・ボーイズ
明日葉高校将棋物語
下巻
[総合評価] B

絵:B
ストーリー:B+
構成:A
キャラ:B+

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【著 者】 柳葉あきら
【出版社】 筑摩書房
発行:2014年3月 ISBN:978-4-480-43152-3
定価:1,000円 398ページ/15cm


【本の内容】
〔上巻〕
第1話 将棋部がない!
第2話 アップ・セット
第3話 大仏と明日葉
第4話 将棋は団体戦

〔下巻〕
第4話 将棋は団体戦(承前)
第5話 目指す者、逃げた者
第6話 迷い
第7話 ラストチャンス
最終話 明日葉高校将棋同好会

◆内容紹介(裏表紙より)
〔上巻〕中学時代の敗北の悔しさを晴らすため、メンバー揃って明日葉高校に進学した沢村・福岡・武藤の三人組。しかし、明日葉では将棋部がすでに廃部になっていた──。将棋同好会をスタートさせ、新しい仲間を募り、幾多のライバルと闘う中で、少年たちは強く成長していく。「週刊将棋」にて連載され好評を博しつつも、いまだ単行本化されていなかった幻の将棋マンガ。盤上の青春を体験せよ。

〔下巻〕メンバーも揃い活動も軌道に乗り始めた明日葉高校将棋同好会。しかし、その前に立ちはだかる大仏高校の壁は厚い。はたして宿敵佐野を筆頭とするこの常勝集団を打ち負かし、念願の高校日本一は達成できるのか? 北川の参戦、元奨励会員の中西、ほか新たなる強豪も登場。爽快な物語と濃密な将棋で、将棋初心者から有段者まで楽しめる。ますます熱くなる熱血青春将棋漫画、ここに完結。


【レビュー】
高校将棋を舞台とした将棋マンガ。「週刊将棋」の1997年10月1日号〜2000年3月22号に掲載されたもの。


〔あらすじ〕
同じ中学出身の沢村・福岡・武藤の三人組は、高校でも将棋をやるために東京都屈指の進学校で、将棋で都内No.2といわれる明日葉高校に進学した。しかし将棋部はすでに廃部になっていた。沢村たちは三人で全国を目指すために奮闘する。


〔主な学校〕
[明日葉高校(あしたば・こうこう)]
沢村ら三人組が入学した高校。将棋では東京No.2(だった)。都立高で高偏差値、成績優秀者は東大に行くレベル。沢村らが入学したとき、将棋部は廃部していた。原因は真剣将棋(賭け将棋)を校内で行ったこと。

[大仏学院(だいぶつ・がくいん)]
14年連続で東京No.1、全国でも6連覇中の将棋強豪校。沢村のライバルである佐野が入学した。


〔主な登場人物〕
[沢村尽(さわむら・じん)]
(スタート時)高1、♂。太めの眉毛にやや乱れ気味のショートヘア。三人組のエンジン。意志が強く、一度決めたことはやり通そうとする。半面、協調性に欠け、横暴で、行き当たりばったりと評される。

「大仏学院に勝って全国大会に行く」と公言している。乱暴な手への対応と詰将棋は苦手。ライバルは佐野。

[福岡和範(ふくおか・かずのり)]
(スタート時)高1、♂。面長メガネで、髪型はソフト天然パーマ風。三人組の要でブレイン。たいてい冷静だが、肝心なところでは押しが強い。時に厳しいことも言う。やや策士すぎる面もある。

[武藤正宗(むとう・まさむね)]
(スタート時)高1、♂。巨体で、縦も横も顔も大きい。いつも無口でほとんどしゃべらない。表情も変わらない(上巻表紙のまま)。三人組のバックボーン的存在。棋風はじりじり押すタイプ。

[佐野恵介(さの・けいすけ)]
(スタート時)高1、♂。関西弁で口が悪く、沢村らにいつも絡んでくる。いつもバンダナを頭に巻いている。中学時代、大仏学院中等部に所属し、沢村らの五大中を負かした。棋風は相手に攻めさせて鋭いカウンターを決めるタイプ。高1で大仏学院のレギュラーになり、個人でも全国優勝レベル。性格は悪いが、鬼のように強い場面を何度も見せる。ただし無敵キャラではない。

[北川まどか(きたがわ・まどか)]
(スタート時)高2、♀。生徒会長。長身、メガネ、おさげ。将棋部復活の条件として、大仏学院に勝つことを要求してきた。

過去に将棋をやっていたようだが…? そしてメガネを取ると…?

[天野(あまの)]
(スタート時)高3、♂。元・将棋部部長。「真剣問題」に関わりがあったらしい。奇襲系の作戦を好む。「高校には高校生にしかできない将棋への接し方があると思う」は名言。

[高田(たかだ)]
(スタート時)高3、♂。大仏学院の主将。沢村と佐野の子どもっぽい行動に対して大人の対応を見せることが多いが、たまに悔しさを顕わにすることも。

[小橋(小橋)]
(スタート時)高1、♂。沢村らと同じクラスだが、目立たない。棋力は「(1997年当時の)将棋ゲーム(主にSFC)ならオールクリア」程度。愛機SFCを客寄せの商品にされてしまう。

勉強熱心で、棋力の成長は著しい。意外とJKにモテる。


〔寸評〕
[タイトル名]
・連載時の原題は『up・set ぼ〜いず』だった。なぜ文庫化で変更になったかは不明。
・「アップセット」はいくつかの意味があるが、本編上巻p103によれば「負けても負けても指し直して対局すること」で、チェス用語らしい。本作の話にはピッタリ合致する。
・他には、「番狂わせ」「下剋上」「じたばたする」という意味合いで使われている。
・「混乱させる」「苦しめる」「ダメにする」「胃がムカムカする」という意味では使われていない。
・なお、「up set」で使うことは少なく、「upset」が一般的。

[絵]
・本作がデビュー作ということで、やや絵は荒く、また少し古い印象はある。1970年代〜1980年代前半風味。
・ただし描き分けはしっかりできており、コマ割り・テンポ・アングルなどは違和感なし。

[ストーリー]
・主な舞台は高校将棋の東京都大会であるが、ライバルの大仏学院が全国で連覇中なので、実質的に高校トップを争う。
・次々と強敵が現れるような「強さのインフレ」は本作にはほとんどなく、「等身大の将棋マンガ」といえる。作者の高校時代の思い出がベースになっているそうだ。
・高1時で1997年という時代設定。当時流行していた将棋作品や戦法がネタとして登場する。
・「高校将棋+日常の高校生活」をベースに話が進むが、「女子の高校将棋の実態」や、「元奨の小銭稼ぎの真剣師」「研修会」なども登場する。

・なお、文庫化時(2014年)には、本作の続編『笑え、ゼッフィーロ』が「週刊将棋」で連載中だった。本作の登場人物が成長した姿で登場したり、似た人物が高校生として登場したりする。現時点(2018年)で単行本化には至っていない。

・また、なんと最終話は収録されていない。「紙数の関係」って、工エエェェェェ(゚д゚;)ェェェェエエ工?ただし、内容は取材その他のウラ話なので、本編のストーリー的には問題なし。

[将棋]
・登場する局面は、多くが「週刊将棋・次の一手」の三段〜五段レベル。
・盤面は将棋書籍用のものを採用しており、読者に実際に局面の状況を考えさせるようになっている。
・戦法選択なども含めて、作者の棋力は相当高そう。


〔総評〕
「週刊将棋」連載ということで、読者層と対象棋力が「将棋有段者」にハッキリ絞られているので、将棋愛好者にはかなり面白く読めて、成功しています。私が将棋をちゃんと始めたのは社会人になってからなので、高校将棋を経験していないのですが、「高校将棋の団体戦」のリアルが少しは感じられた気がします。

また、1回の掲載分が6p相当なので、やや濃いめに濃縮されているので、上下巻の2冊(ほぼ800p)ですが普通の単行本5〜6冊分くらいのボリュームがあります。

全体として高校3年間の将棋生活がメインになっていますが、個人的には、中学時代の話や、三人組の出会い、沢村vs佐野の過去の因縁なども見たかったです。まどかは伏線を張った割には回収できなかったのは残念。

この辺りは、続編『笑え、ゼッフィーロ』ではすごく良くなっている(ような気がします)ので、単行本化を期待したいです。(2018Dec16)



【関連書籍】

[ジャンル] 
将棋コミック
[シリーズ] 
[著者] 柳葉あきら
[発行年] 
2014年

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