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■ものの歩

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ものの歩(1)
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ジャンプコミックス
ものの歩
全5巻
[総合評価] B+

絵:A
ストーリー:A〜B
構成:B
キャラ:A〜B

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【著 者】 池沢春人 橋本崇載/監修
【出版社】 集英社
発行:2016年1月〜2016年9月 ISBN:
定価:361円 145ページ/18cm(1巻)
ものの歩(1)
≪1巻≫
2016年1月
ものの歩(2)
≪2巻≫
2016年3月
ものの歩(3)
≪3巻≫
2016年5月
ものの歩(4)
≪4巻≫
2016年8月
ものの歩(5)
≪5巻≫
2016年9月


【本の内容】
◆内容紹介
〔1巻〕
要領が悪く、周りから否定され続けてきた高校一年生・高良信歩。彼の引っ越した下宿先は、なんと“将棋のプロ"を目指す人達が暮らす場所だった。将棋に触れ、楽しさを見つけた信歩が歩む、全力青春将棋譚開幕!!

〔2巻〕
東京で一番の棋士を目標に、大会で実戦経験を積もうとする信歩。初出場で緊張しながらも1回戦を突破した。2回戦は「高校生プロゲーマー」相楽十歩と対戦。十歩が優勢に駒を進めるも、勝負が進むにつれ変化が…!?

〔3巻〕
ついに始まった都大会。数ある戦い方の中で、初心者の信歩が選んだ戦法は『矢倉』。一歩も引かぬ覚悟を持って勝負を挑む信歩は、見事1・2回戦を突破!次戦は相楽十歩のいる鎌谷商業か、優勝候補の駒江第一か?

〔4巻〕
優勝候補の駒江第一に勝利を収めた信歩たち千賀高校は、決勝戦の舞台へと駒を進めた。対戦相手は、竜胆が長い間再戦を待ち望んだ蒼馬のいる将和高校。信歩と共に歩んできた都大会、最後の勝負は一体…!?

〔5巻〕
将棋の面白さに触れ、プロになることを決意した信歩。奨励会の入会試験のため、様々な難問を乗り越えた信歩は、試験当日を迎えた。皆に見送られ、かやね荘を出たが…!? 熱き青春将棋譚──ここに堂々完結!!


【レビュー】
将棋初心者の高校生がプロを目指す将棋マンガ。


〔あらすじ〕
高校1年生の信歩は、入学式前に家を出て、奨励会員専用の下宿「かやね荘」に引っ越す。ただし、信歩は全くの将棋初心者で、入居は「手違い」によるもの。かやね荘で将棋の楽しさに目覚めた信歩は、全力で将棋に取り組むことを決意する。


〔主な登場人物〕
[高良信歩(たから・しのぶ)]
高校1年生、♂、15歳。志望校に落ち、滑り止めの千賀高校に入学。将棋初心者だが、奨励会員専用の下宿「かやね荘」に手違い(?)で入った。

要領が悪く、分からないところがあると前に進めない。不器用で、受け答えを考えているうちに周りに置いていかれやすい、やや空気が読めない、会話のキャッチボールが苦手、ちょっと見た目が変わると個人を識別できない、言葉通りに受け止めてしまう、など様々な困難を抱える。

しかし、まじめで、まっすぐで、努力家である。

右手に包帯をしている。

[直井泰金(なおい・やすかね)]
かやね荘住人で最年長者。奨励会員三段、♂、25歳。ゆるふわヘア+眼鏡のルックスで、室内ではどてらを着ている。スーツを着ると結構イケメンになる。

中学生棋士を期待された早熟の天才だったが、三段リーグには10年在籍している。勉強も将棋も教えるのが上手い。

[風丘みなと(かざおか・みなと)]
かやね荘唯一の♀、15歳。ツインテールの美少女。キャミ、ホットパンツ、オフショなど露出度の高い服を着ているが、他の♂住人は誰も気にしていない。奨励会員だが、段級・棋力は明かされていない。

室内ではだらしないが、外面(そとづら)は良い。基本的にツンだが、ほんのちょっとずつデレる。

[県銀雅(あがた・ぎんが)] かやね荘住人。奨励会三段、♂、24歳。Gackt風のイケメン。周囲にあまり関心がない。
[弥代桂司(やしろ・けいし)] かやね荘住人。奨励会員、♂、16歳。ツンツン金髪。現かやね荘住人では最弱。
[櫻井香月(さくらい・かづき)] かやね荘住人。奨励会員、♂、16歳。中性的なルックスで、かなり小柄。

[藤川竜胆(ふじかわ・りんどう)]
信歩の同級生、♂。名人の孫で、プロになるつもりだった。怖そうな外見と態度だが、意外といい人。自分にわざと負けた幼馴染・蒼馬との本気の再戦を目指す。千賀高校で、信歩と二人だけの将棋部を結成することになる。


〔寸評〕
[タイトル名]
・「ものの歩」の由来は明かされていないが、たぶん「武士(もののふ)」から。ただし、本作に“武士感”はほぼない。
・他に、主人公が歩(特に垂れ歩)を好きになるので、「Monoの歩」もあるかも。「mono」は「single」「one」の意味があるので、「まっすぐで、一点集中の歩み」とか「一歩千金」とかの意味がかかっているかも。

[主人公]
・主人公の信歩くんは、ほぼアスペルガーですね。これだけ困難が多いと、今までホント大変で生きづらかったと思います。(※棋士には多いとも言われます。昔の観戦記でよく「○○(棋士名)の率直発言」という表現が出ます)
・信歩くんがいろいろやらかすのが面白い!次は何をやってくれるのか、楽しみ。
・信歩くんが超初心者から強くなっていく過程も良い。
・信歩くんが、周りの人を巻き込みながら(本人に自覚なし)、将棋も人間的にもちょっとずつ成長していくストーリー。基本的に悪人キャラはいません。

[サブキャラたち]
・竜胆vs蒼馬の話、いいね!
・プロゲーマー十歩は最初あまり好きじゃなかったですが、彼も必要なキャラです。
・周りの人たちも、過去のしがらみが解けたり、救われたような感じになり、読後感良し。

[ヒロイン(?)]
・みなとは将棋マンガ史上で最高レベルの可愛さです。(※個人の感想です!)造形的・性格的に似ているのは、FE覚醒/セレナ、FEif/ルーナ、DOA/マリー・ローズなど。
・顔、スタイル、服装、性格ともに、作者さんよく分かっていらっしゃる(笑) 細かいところまで行き届いているわー。
・ただ、4巻のおまけマンガの最後はさすがに露出しすぎかな…読んでるところを家族に見せられないレベルなんで。
・みなとの実戦での活躍を見たかった…。将棋パートではほぼ解説役だったので。


〔総評〕
全体的にはすごく良かったと思います。信歩の強くなるスピードがあまりにも速いのとか、高校トップレベルの棋力感はちょっと私の感覚とずれていましたが、大会で終盤力を生かすために「矢倉一本に絞る」とか、信歩のアスペ感にはすごく共感できました。

ただ、ちょっと落ち着いて練り込めなかった部分があったようで、ストーリーの出来にはアップダウンがありました。個人的には、導入部B⇒竜胆編A⇒東京都大会編B⇒高校将棋編A⇒奨励会編B⇒エピローグAです。

キャラの出来もややバラツキがあり、信歩A、泰金B+、みなとS、竜胆B+、他キャラBという感じでしょうか。

5巻スタート時点(奨励会編の入口)で連載打ち切りが決まってしまったとのことで、5巻はすでに「締めモード」になり、いくつかの伏線が明かされないままでした。奨励会の新キャラたちの活躍や、泰金以外のかやね荘住人のエピソード、信歩の右手の包帯の秘密など、今後明かされそうだったものがお蔵入りしたのが残念。どこかゆっくり描けるところはないですかねぇ。(藤井聡太ブームの到来があと1年早ければ、もっと連載が続いていたのかも)

いろいろと「ちゃんと描けてる」作品だったと思うので、どこかで「ちょっと大人になった信歩くんたち」を見てみたいです。(2018Oct04)



【関連書籍】

[ジャンル] 
将棋コミック
[シリーズ] ジャンプコミックス
[著者] 池沢春人 
橋本崇載
[発行年] 
2016年

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