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■第66期将棋名人戦七番勝負全記録

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第66期将棋名人戦七番勝負全記録
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第66期将棋名人戦七番勝負全記録
羽生十九世名人誕生
[総合評価] C

難易度:★★★★

図面:見開き2枚
内容:(質)B(量)C
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜向き

【編】 朝日新聞文化グループ
【出版社】 朝日新聞出版
発行:2008年8月 ISBN:978-4-02-100155-0
定価:1,575円(5%税込) 209ページ/19cm


【本の内容】
【名人】森内俊之 【挑戦者】羽生善治(奪取)

・【対戦者の横顔と七番勝負への抱負】第66期A級リーグ表/「地に足をつけて」(羽生善治)/「自分が試される」(森内俊之)
 

先−後

戦型 観戦記  
第1局 ○森内−羽生● △ウソ矢倉▲右四間飛車 30p
第2局 ○羽生−森内● △一手損角換わり▲早繰り銀 28p
第3局 ●森内−羽生○ 相掛かり▲引き飛車棒銀 村上耕司 30p
第4局 ○羽生−森内● △一手損角換わりダイレクト向飛車 28p
第5局 ○森内−羽生● 相掛かり▲引き飛車棒銀 丸山玄則 24p
第6局 ○羽生−森内● 相掛かり▲引き飛車棒銀 大川慎太郎 28p

・「小宇宙の清冽な空気・輝き」(作家・奥泉光さんが見た名人戦第1局)=4p
・名人戦を振り返って
 決着時の朝日新聞記事から=10p
 「現代将棋はモダンアート」羽生善治・新名人に聞く=13p
 戦うべき敵は内にある(小説家・保坂和志)=2p
・〔キーワード〕永世名人/将棋名人戦・過去の成績=計3p

◆内容紹介
羽生、森内を破り、永世名人に!熱い戦いの全軌跡を、ここに再現!羽生名人ロングインタビュー収録。


【レビュー】
第66期名人戦七番勝負の観戦記・朝日新聞社版。

すったもんだ(2006年名人戦問題−Wikipedia)の末、今期から名人戦は朝日新聞と毎日新聞の共催となった。それに伴い、同じ対局に二社の観戦記者が付くようになり、観戦記も別々に掲載されるようになった。

さて、前期で第十八世名人の資格を得た森内に挑むのは、あの羽生である。羽生は、やはり永世名人にリーチをかけながら、2度も森内に跳ね返されている。

第1局は後手のウソ矢倉に森内がすばやく反応して▲右四間飛車に。羽生の上手い序盤戦で後手がわずかなリードを得るが、仕掛けから控え室もビックリの飛車切りが少しやりすぎで、森内が正確に反撃を決めた。しかしこの飛車切り、ほとんどの棋士には通ってしまうだろうと思う。さすがは森内と思わせた。

第2局は後手一手損角換わりに▲早繰り銀。3五での歩交換から引いたばかりの銀を、またすぐに▲3五歩と合わせた手に驚いた。羽生は、過去の指し手に影響されず、常に新しい視点で局面を見ているのだと思った。将棋は互いに難しい局面が続いたが、後手森内のごく当然と思われた歩の成り捨てが失着となった。なお、この歩の成り捨ては「私が後手でも歩をなりますけどね」(p191)と勝ったほうの羽生が語っている。森内に運がない将棋だったのかもしれない。

第3局は相掛かり▲棒銀。先手の右銀が、3八→2七→3六→4五→5六→6七→7六と驚きの動きを見せ、完璧な押さえ込み態勢となった。

駒得も入玉もほぼ確定的な状況で羽生は粘り、ついには森内が打ったばかりの銀を素抜かれてしまい、逆転。「100年に一度の逆転」などと言われた(前期の頓死は「何年に一度の逆転」なんだろう?)。しかし、敗着とされた▲8四成桂も入玉党から見れば自然な感じの手である。羽生がすごかったとしか言いようがない。

第4局は、△角交換ダイレクト向飛車にに▲6五角を決行。先手は手損がひどいが後手の形を乱した格好となったが、森内の力強い△5四金がそのバランスを後手の主張点に変える手となった。このあとは息詰まる駒組み戦となり、2日目夕食休憩時にまだ戦いが始まらないというスローペース。後手から仕掛けたもののわずかに無理気味で、先手が勝ち切った。

第5局は相掛かり▲引き飛車棒銀で、森内の完勝譜。…と、第一譜でいきなりネタばれされた(笑)。そりゃ確かに新聞読者は結果も棋譜も知ってるだろうけど…さ。41手目▲6五歩ですでに「まずい」と羽生が語るほどだった。

第6局もまた相掛かり▲引き飛車棒銀。一手得を図る▲6六歩に△8二飛が突っ張った手。これは確か、この名人戦後に発行された『最強棒銀戦法』(飯塚祐紀,創元社,2008.07)に載ってたか。△3九歩成とと金を作ったものの、中盤で△6五歩の位を得る代償にと金を捨てる展開にしてしまい、これが災いした。これにて羽生十九世名人の誕生となった。

p192で羽生が語るように、今回は序盤から定跡を外れる力戦調になった将棋が多く、形勢も構想もものすごく難しかったと思う。わたし自身も、ネットで中継を見ていたときと、週刊将棋で解説を読んだときと、本書で観戦記を読んだときとで、棋譜から受ける印象がまったく違って見えた。自分で棋譜を並べたとき、次の一手がほとんど当たらない難しい局面が多かった。


さて、今回から名人戦は朝日新聞と毎日新聞の共催になり、観戦記集も両社から出版されるようになった。やはり朝日版と毎日版の比較が気になるわけだが、わたしはまだ第66期の毎日版を読んでいない(すみません)。というわけで、前期(第65期)までの毎日版との比較をしておきます。

まず、わたしにとっては本書の観戦記の印象は割と良いほう。全体的に指し手の解説が多めになっている。第1局〜第3局は投了図の解説が不十分なのが残念だったが、第4局〜第6局では簡潔ながら触れてある。できれば、朝日が以前主催していたときのように、「投了のあと」を追加しておいてほしい。(私の周りには、級位者で棋書も買ったことがないが、新聞の観戦記だけは毎朝読んでいるという人は案外多くいる。彼らにとっては、プロの投了図は難しいので解説はマストだと思う。本書の購入者はほぼ有段者だと思うが、新聞のほうの読者の大半は級位者であると思ってほしい)

また、観戦記や記事を読んでいて不快になることはほとんどなかった。本来は当たり前のことなのだが、以前の毎日観戦記ではそれが多かった。さらに今回は6人の記者が観戦記を書いているが、特に“個性”を感じたものはなかった。これは記者の文章の“クセ抜き”ができているということであり、わたしはむしろ好意的に捉えている。

あとは、一局あたりの観戦記量が増えたことと、開幕前の新聞記事、決着後の新聞記事、さらに新名人へのロングインタビューを掲載していることも大きな改善点だ。

褒めている割にはあまり総合評価が上がってないじゃないか。うーん、良くはなったがBってほどじゃぁないよな、というのが正直な感想。(2008Nov05)



【関連書籍】

[ジャンル] 
名人戦観戦記
[シリーズ] 
[著者] 
朝日新聞文化グループ
[発行年] 
2008年

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