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■矢倉はずしの振飛車

< | No.0919 | >

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(ポケット版)
矢倉はずしの振飛車
zoom
将棋タウンさんthx!
王将ブックス ポケット版
特殊戦法シリーズII
矢倉はずしの振飛車
[総合評価] C

難易度:★★★☆

図面:見開き2枚
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜上級向き

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【著 者】 佐藤大五郎
【出版社】 北辰堂
発行:1974年 ISBN:
定価:380円 158ページ/15cm
(DELUXE版)
矢倉はずしの振飛車
zoom
王将ブックス DELUXE版
E 特殊戦法シリーズ(2)
矢倉はずしの振飛車
[総合評価] C

難易度:★★★☆

図面:見開き2枚
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜上級向き

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【著 者】 佐藤大五郎
【出版社】 北辰堂
発行:1987年3月 ISBN:4-89287-067-6
定価:800円 158ページ/19cm


【本の内容】
第1章 急戦調 ・後手の作戦(1)(△4四銀型)
・後手の作戦(2)(△6四銀型)
・先手の作戦
34p
第2章 チョンマゲ振飛車 ・後手の中飛車
・引き角対抗策
・石田流本組みの奇策
28p
第3章 矢倉振飛車 ・後手の中飛車
・後手7四歩の早突き
・飛車先不換型
・飛車先の不突き
・△7三桂の早跳ね(1)
・△7三桂の早跳ね(2)
・左玉中飛車
・▲2五歩型
・相中飛車
・奇襲向飛車
92p

◆内容紹介
将棋は四つに組むことも大切ですが、ことさらに敵の好きな、得意な戦法へとび込む必要はありません。自己の好み、得意な戦法へ敵を引きずり込むほうが、はるかに指しやすいでしょう。敵の注文をはずす作戦が当然考え出されてくるわけです。本書は「矢倉はずし」です。中心は先手の注文を後手がいかにはずすか。矢倉の放棄時機などをくわしく解説しました。


【レビュー】
矢倉模様から振飛車に転じる作戦の指南書。

矢倉は、初手から▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩の展開がマスト。5手目は▲7七銀と▲6六歩に分かれる。いずれも▲が角道を止めて序盤は穏やかな展開を目指すのに対し、後手が急戦や変化に出ることは十分考えられる。特に▲7七銀が対振飛車に向かないと見て、後手が飛車を振る作戦は一般的に「陽動振飛車」と呼ばれている。普通の対抗形と違い、▲7七銀と△8四歩がそれぞれ「序盤には不急の一手」となるため、どちらの欠点が大きいかの戦いになる。

本書は、矢倉模様から振飛車に転じる戦いについて、たくさんのパターンを解説した本である。

各章の内容をザッと紹介していこう。

第1章は、急戦調の矢倉中飛車。

(1)後手の作戦(1)
▲7七銀からの矢倉模様に対し、後手は右銀を6二〜5三〜4四と繰り出して中飛車に構える。〔右図〕 以下相中飛車になるが、後手やや無理筋。

(2)後手の作戦(2)
今度は後手の右銀は6四へ。角道が通っているのが(1)と違うところ。先手は右金を繰り出してやはり相中飛車で対抗。これも後手上手くいかない。

(3)先手の作戦
矢倉模様から後手の△4二銀が早いのを見て、▲6六銀〜中飛車〜美濃囲いとする。

第2章は、チョンマゲ振飛車。チョンマゲとは、この場合は△8四歩を突いた美濃囲いのこと。序盤はこの歩が負担になる。▲7七銀と△8四歩がトレードオフになるというのが後手の主張。

(1)後手の中飛車
後手は左銀をすぐに△5三銀と立ち、中飛車からチョンマゲ美濃にする。〔右上図〕

(2)引き角対抗策

後手の陽動振飛車に対して、先手は引き角で対抗する。本書では「角は▲8八角のラインで使いたい」と否定的。▲8七玉型矢倉にして作戦負けになっているが、現代なら居飛穴を狙うところだろう。

(3)石田流本組みの奇策
5手目▲7七銀に対して、いきなり△3五歩から石田流を狙う。〔右下図〕 著者の新作戦とのこと。これは現代でも奇襲として使えるかもしれない。なお、本書には書かれていないが、5手目▲6六歩の場合に本作戦を採ると、相振飛車になったときに△8四歩がお手伝いの無駄手となってしまう。

第3章は、矢倉振飛車。第2章の作戦と大きな違いはないが、出版当時にプロでも戦われていた本格的な作戦という意味で章を改めている。

(1)後手の中飛車
歩越し銀急戦(居玉での▲4六銀)vs△矢倉中飛車。本書の矢倉中飛車は、美濃囲いor右玉に構えるものが多い。

(2)△7四歩の早突き
飛の態度を保留して△7四歩を先に突いて様子を見る。現代の目なら当然?

(3)飛車先不換型
(2)の変化で、先手が飛先歩交換のチャンスをスルーして▲6八銀(▲7七銀から引いて角道を通す)を優先する。

(4)飛車先の不突き
いわゆる飛先不突き矢倉。先手が矢倉中飛車を採り、作戦勝ちになる。本書の初出は1974年なので、飛先不突きの形だけは田中寅彦が飛先不突き矢倉を普及させる前からあったようだ。

(5)△7三桂の早跳ね(1)
後手が飛車の態度を決めずに△7三桂と跳ね、△4二飛と四間飛車に構える。〔右上図〕 升田幸三の実戦譜をベースにしている。

(6)△7三桂の早跳ね(2)

(7)左玉中飛車
▲6九玉型の矢倉中飛車。現代なら後手がこの形で戦う。本節の場合、先手の急戦策がミエミエなのに△3三銀はさすがに緩手すぎる。当然のように先手作戦勝ち。

(8)▲2五歩型
先手が▲2五歩で△3三銀を強要し、四手角(▲2六角)から中飛車、さらに右玉へ。なかなか個性的な作戦。

(9)相中飛車
先手の早い▲4六角に対して、後手は両銀を繰り出して中飛車に構える。

(10)奇襲向飛車
後手の作戦。先手が▲2五歩を早く決めてきたときに使える。初めから狙うのは現代では無理だが、(8)の作戦に呼応できるかも。


全体的に、最終図では作戦勝ちくらいで終わることが多い。最終図での形勢判断や以降の方針などが明確に書かれているのは良い。

基本的に本書の戦法は、「先手は5手目▲7七銀が常識」「先手も飛先の歩を伸ばして行くのが常識」という時代背景で戦われていたもの。現代の整備された矢倉の序盤手順は級位者でも知っているため、本書の作戦が実現できる機会はまれだと思う。

ただし、矢倉戦での変化球についてさまざまなアイデアが書かれているので、矢倉を指していて駒組みの閉塞感を感じている人には一読の価値があるだろう。成否はともかく、「矢倉はもっと自由に指していい」と広がりを感じてもらえるはずだ。(2011Apr21)

※誤植・誤字等(Deluxe版・初版で確認):
p14 ×「いいかえる後手の攻めは」 ○「いいかえると後手の攻めは」
p28 ×「以下は第二次の駒組み、△4二銀…」 ○「以下は第二次の駒組み、△4三銀…」
p46 ×「この左桂がサバければ」 ○「この右桂がサバければ」
p62 ×「▲4六歩の防害」 ○「▲4六歩の妨害」
p73 ×「▲8六歩△同歩▲同角など」 ○「▲2四歩△同歩▲同角など」
p74 ×「▲7九角から▲8六歩の筋も」 ○「▲7九角から▲2四歩の筋も」
p83 ×「(2)、△2一飛成なら▲3八銀△1一竜」 ○「(2)、△2九飛成なら▲3八銀△1九竜」
p109 ×「参考までに被露しておきました」 ○「参考までに披露しておきました」
p123 ×「▲4四銀はあの“先”。」 ○「▲4四銀はあとの“先”。」
p133 ×「全々違うのです。」 ○「全然違うのです。」
p148 ×?「銀に銀をぷっつけて」 ○「銀に銀をぶっつけて」



【関連書籍】

[ジャンル] 
矢倉
[シリーズ] 
王将ブックス
[著者] 
佐藤大五郎
[発行年] 
1974年 1987年

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