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最強将棋21 角交換四間飛車を指しこなす本 |
[総合評価] A 難易度:★★★ 〜★★★★ 見開き1問(天地逆) 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解答の裏透け:A 解説:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 藤井猛 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2014年7月 | ISBN:978-4-86137-042-7 | |||
定価:1,512円 | 251ページ/19cm |
【本の内容】 |
プロローグ=5p 第1章 予行演習=60p 第2章 「逆棒銀」とさまざまな敵=51p 第3章 7筋での動き=43p 第4章 腰掛け銀との戦い=50p 第5章 飛車先保留との戦い=48p ◆内容紹介 四間飛車の使い手として知られる著者が満を持して贈る、角交換四間飛車の指南書です。以前は角交換振り飛車といえば力戦の一種でしたが、著者が道を拓いて定跡の整備が進みました。駒組みや戦い方の基本について、第一人者が深い愛情を込めて語ります。 本書は示された手順を追うタイプの定跡書ではなく、一問一答形式である点が大きな特徴です。自分の考えと正解を比べながら読み進むうちに、自然と指し方のコツが身についていきます。 これから新しい振り飛車を指してみたいという方はもちろん、自己流で指してきた方の見直しにも役立つはず。読みこむほどに美しいフォームが身につきます。 角交換四間飛車は、美濃囲いに囲ったら、あとは自分から積極的に攻める戦法です。いわゆる「逆棒銀」からの飛車先逆襲、7筋からの動き、四間飛車からの攻め等を相手の形を見て使い分けます。 戦いに入ったあとの指し方も、明確な指針が見える局面まで進めました。多くの局面に「形勢判断マーク」を入れてありますので、この戦法独特の勝ちやすさ/勝ちにくさを知る指針としてください。 ぜひとも、立ち読みの「まえがき」と「プロローグ」をお読みください。 |
【レビュー】 |
▲角交換四間飛車の次の一手問題集。 「指しこなす本」シリーズは、浅川書房の看板商品の一つである。いわゆる指しこな形式のレイアウトで、見開きページの右側下に問題を配置し、めくった次の右上に解説を配置することで、本の右側だけを見ていけばよいという構成になっているため、思ったよりもサクサク進んでいけるのが特徴。 そして、著者の藤井は、この指しこな形式の祖でもある。浅川氏が浅川書房を興す前の、河出書房新社の最強将棋塾シリーズで『四間飛車を指しこなす本(1)』を出版したのが最初だ。その藤井が、角交換四間飛車を携えて帰ってきた。 本書は、指しこな形式で角交換四間飛車の指し方をマスターできる本である。 まえがきとプロローグにあるように、角交換四間飛車の利点は次のようにいろいろある。 (1) 先手でも後手でも指せる。 (2) 玉を美濃以上の堅さにできる。 → 角交換後に飛銀を攻めのポジショニングにでき、しかも金銀3枚に囲える。 他の角交換振飛車にはない特徴。 (3) 自分から攻められる。 → 居飛車からの急戦は(今のところ)ない。 ただし、攻めには意外とタイミングの見極めと繊細さが伴う。本書は、攻めのバランス感覚を身に付ける内容となっている。 本書は5章に分かれているが、章が進むにしたがって居飛車側の序盤がシビアになっていくのが特徴。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 第1章は、居飛車から角交換する形。角交換すると手損になるので、居飛車の手が遅れ、振飛車からの攻めが成立しやすい。 いまどき居飛車から角交換してくれることはまずないものの、ここで攻めの基本を覚えよう。よほど居飛車が警戒していても、基本の攻めが通用するチャンスは結構出てくるものである。 第2章以降は、振飛車から角交換する形。角交換四間飛車では、それが通常である。 第2章では、基本的な攻め筋の一つである「逆棒銀」について、居飛車からの様々な反撃に対応する術を学ぶ。下の図にあるように、後手が1筋を詰めている分だけ手が遅れているものの、ちゃんとした対応をマスターしていないと振飛車が容易ではない。居飛車の反撃は、対応容易なものから手ごわいものまで9つもある。心して読みこもう。 第3章は、7筋での動き方。 第2章での逆棒銀を封印するために、居飛車は早めに△7四歩と突いてくる。本章では、1筋の端歩を△1四歩で留めて逆棒銀対策を優先している。この場合、逆棒銀は成立しないが、▲6六銀から7筋で1歩交換する動き方がある。 7筋でポイントをあげたら持久戦を目指す。▲7七桂はキズになりやすいのでなるべく跳ねない方がいい。 第4章は、△腰掛け銀。居飛車が1筋の端歩よりも△6四歩〜△6三銀を優先してくる形だ。実はこれでも逆棒銀対策になっているし、第3章の7筋での1歩交換もない。状況によっては6筋攻めもあるが、本章では駒組みを進めるのを推奨している。 なお、p179からの左金保留型も一考の余地がある。5筋・6筋が薄い半面(△6七角などがある)、後手からの△7二飛は利かない(7筋を放置しても▲6九金の守りで飛車が成れない)。 第5章は、飛車先保留との戦い。居飛車は飛先を伸ばさず、端歩も突かずで、陣形整備を優先してくる。後手玉の囲い方は本章では2種類で、居飛穴で堅くするか、平矢倉でバランスを取りつつ堅くするか。 難敵は章後半の「最強矢倉vs最強美濃」。別に平矢倉自体が最強の囲いというわけではないが、第4章で強敵だった腰掛銀との相性がとても良い。対して先手は、左銀を▲6八銀と引きつけ、「最強の平美濃」で対抗する。横からの攻めにはとことん強い構えだ。 なお、レイアウトは指しこな形式だが、本書ではさらに2つの工夫がされている。 ・形勢判断マークが解説図面についている。 ★3、★2、★1、互角、×1、×2、×3 ★が多いほど自分が有利、×が多いほど自分が不利。 かつては、チェスにならって「±」などで形勢を表した本もあったが、こちらの方が感覚的に分かりやすい。 ・[必修]、[基本]、[応用]、[難問]が出題図についている。 それぞれ、問題の重要度を示したもの。少なくとも、[必修]と[基本]だけは何とかモノにしたい。 角交換四間飛車は狙いが簡単そうにみえるため、居飛車がどんな構えでも逆棒銀を仕掛けている人もいるかと思う。しかし意外と単純ではなく、奥の深い戦法なのだ。 この戦法と長く付き合いたい人は、必ず本書をマスターして、攻めのバランス感覚を掴んでおこう。その上で他の定跡書を読めば、とても理解しやすくなっていることに気付くに違いない。(2015Mar18) ※誤字・誤植等(第3版で確認): 特に見つかりませんでした。 |