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将棋はここから始まる! 石橋幸緒の駒落ちレシピ [十枚〜八枚落ち] |
[総合評価] B 難易度:★☆〜★★ 図面:見開き2〜4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初心〜初級向き |
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【著 者】 石橋幸緒 | ||||
【出版社】 長崎出版 | ||||
発行:2012年5月 | ISBN:978-4-86095-501-4 | |||
定価:1,050円(5%税込) | 141ページ/21cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
【執筆協力】蝶谷初男
・【コラム】ちょっとお休み・サッチャンの部屋(1)〜(2) |
【レビュー】 |
初心者向けの駒落ち指南書。 通常、入門書では、ルールを一通り説明したあと、平手で一局指せるように解説されている。間に手筋や形勢判断などの解説が挟まれることもあるが、基本的には一冊の中で平手が指せるように構成されている。 しかし実際には、ルールを覚えた手の入門者がいきなり平手で指すことは難しい。周りに同程度の人がいれば、入門者同士で分からないなりに指すこともできるが、中級・上級以上の人しかいない場合も多いだろう。 そこで、入門者に将棋の感覚を味わってもらえるのが「駒落ち」である。上級者がたくさん駒を落とすことで、入門者でも容易に勝つことができるのだ。 ところで、多くの駒落ち定跡書には六枚落ち以上しか載っていない。八枚落ちが載っている本もいくつかあるものの、入門者は八枚落ちでも勝つことは難しいだろう。そこで「十枚落ち」(玉と歩9枚だけ)や「歩三兵」(玉と歩3枚、「歩三歩」とも)から始めるのだが、十枚落ちが載っている本はほとんど見当たらない。(わたしの知る限りでは『将棋駒落の指し方』(影山稔雄,大泉書店,1955)くらいだ。それも、丁寧に解説しているわけではない)そこに目をつけたのが本書である。 本書は、初心者を対象に十枚落ち、九枚落ち、八枚落ちを丁寧に解説した本である。 本書の棋力ターゲットは20〜15級。これは、「ルールを覚えた(20級)〜最後まで(ルールどおり)ちゃんと指せる(15級)」くらいの棋力である。解説は緻密で、字はかなり多い。 十枚落ち〜八枚落ちは、下手が有段者であればどのように指しても勝てる手合なので、特に決まった定跡というものはない。なので、本書では、平手に応用できる考え方を中心に、オリジナルの手順で進めていく。おおざっぱに、「初手から敵陣突破まで」と、「寄せ〜詰めろ〜詰み」までに分かれている。強調している点は、「弱点を狙う」「攻め駒を適切に増やす」「詰めろをかける」の三点。 本書での各手合の概要は、以下のようになっている。 ●十枚落ち (玉と歩9枚のみ) ・▲6六角から馬を作る(守りのない弱点を狙う) ・次に、飛を働かせるため、飛先を伸ばす(※普通は、馬で歩を喰っていく展開になりがち) ・飛と馬で敵陣突破する ・「詰み」の概念について学ぶ ●九枚落ち(玉、右金、歩9枚) ・▲6六角として、玉と金を離す ・飛先の歩を切る ・玉頭に歩を伸ばす(←これが従来の定跡書では教えなかった感覚) ・と金を使う ・空き王手 ・「詰めろ」という考え方の大切さを学ぶ ●九枚落ち(玉、左金、歩9枚) (※左金落ちよりも簡単) ・▲6六角として馬を作る ・飛先の歩を切る ・玉頭に歩を伸ばす ●八枚落ち(玉、金2枚、歩9枚) (※オリジナル作戦) ・▲6六角として、上手の右金を2筋から遠ざける ・飛先の歩を切る ・3筋の歩を伸ばす 八枚落ちまでできるようになれば、どうすれば将棋は勝ちになるのか、どういう戦略でいくと良いのかは理解できているだろう。ここまで行けば、六枚落ち以降もスムーズに学べるはずである。 どちらかといえば、初心者が本書を読んで理解していくというよりも、上級者が「このように教えたらいいのか」というのを理解するための本のように思える。初心者の指導に携わる人や、自分の子どもに将棋を教えようと思っている人には、必読の一冊。(2012Jul18) |