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第二十一期竜王決定七番勝負 激闘譜 渡辺明vs.羽生善治 |
[総合評価] C 難易度:★★★☆ 図面:見開き2枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:B 中級以上向き |
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【編】 読売新聞社 | ||||
【出版社】 読売新聞社 | ||||
発行:2009年3月 | ISBN:978-4-643-09003-1 | |||
定価:2,100円(5%税込) | 262ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【竜王】渡辺明 (防衛) 【挑戦者】羽生善治
・「いまだ 信じられない」(竜王・渡辺明)=4p |
【レビュー】 |
竜王戦の観戦記。読売新聞に掲載された観戦記から主要なものをピックアップ。 竜王4連覇で、渡辺に永世竜王がかかる。その渡辺に挑むは、最強の挑戦者・羽生。こちらもすでに通算6期獲得しており、永世竜王がかかる。「連続5期または通算7期」という永世竜王の規定による巡り会わせだ。また、羽生には「永世七冠」もかかっていた。渡辺にとっては、これまで森内・木村・佐藤康×2とまさに最強クラスを破ってきたわけだが、誰もが認める最強者・羽生にも勝てるか?という試金石でもあった。 本シリーズの見所は、第1局・第4局・第6局・第7局だと思う。 第1局は、羽生の△一手損角換わり+右玉に対し、渡辺が▲穴熊から2筋を先攻。角と金桂の二枚換えで竜を作り、しかも穴熊vs右玉では誰の目にも渡辺優勢と見えた。しかし、羽生だけはこの局面を正確に捉えていた。6筋からの一見遅そうな反撃、そして馬で取れる銀にさらに取りをかける△6四角。最終的には羽生の完勝譜となった。 この一局の羽生の圧倒的な大局観を見せ付けられては、本シリーズの趨勢はすでに決まったかと思えた。事実、自信を失った渡辺は瞬く間に3連敗を喫した。日本中の将棋ファン、そして渡辺でさえも羽生の奪取→永世七冠は既定路線と思えただろう。 それが第4局でかすかに歯車が狂う。相掛かりの薄い玉から渡辺は必死に上部脱出を図るが、本人でさえも諦めかけていたとき、打歩詰めで逃れている順を発見。ここで1勝できたことで、渡辺が息を吹き返した。(なお、観戦記中には出てこないが、渡辺が投了しようかと思っているときに、羽生が水を飲んで一息入れたため、渡辺が違和感を感じて読み直したら打歩詰めの筋を発見したそうである) 第6局・第7局は後手の急戦矢倉。かつては郷田流、近年は阿久津流ともいわれる形で、△5三銀右から5筋の歩を角で交換するもの。この大舞台で、渡辺は「誰にも話さず温めていた」という新手を連発した。第6局は羽生が対応に失敗した形で、封じ手の時点で形勢に差がついてしまったが、第7局は七転八倒の大熱戦。互いにミスはあったので名局とはいえないと思うが、ミスといっても最高峰レベルの、人間同士の実戦ならではの大熱戦だった。 「初の永世竜王」「将棋界初の3連敗4連勝」という記録だけでなく、今期は本当に見ごたえがあったと思う。本の内容が格別良くなっているわけではないが、今期は内容と展開が良かった。WEB中継で燃えた人にはオススメ。(2009Jul01) ※なお、本書の観戦記では取り上げられていないが、第3局と第4局の間に更新された「妻の小言。」(俗称:嫁ブログ−渡辺の奥さんが書いているブログ)が大逆転防衛の遠因だろうとわたしは思っている(笑)。渡辺は一応否定している。 ※熱戦に便乗?してか、定価が一気に200円アップしてますが… ※今期から「立会人」と「解説者」が扉ページに記載されるようになった。「副立会人」はなぜか載っていない。 |
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