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■目からウロコ!今どき将棋格言

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目からウロコ!今どき将棋格言
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目からウロコ!今どき将棋格言 [総合評価]
B

難易度:★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:B+
読みやすさ:A
中級〜向き

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【著 者】 青野照市
【出版社】 創元社
発行:2020年3月 ISBN:978-4-422-75149-8
定価:1,430円(10%税込) 208ページ/19cm


【本の内容】
・目からウロコの新格言=12個
・今流に修正した格言=12個
・古今不変の格言=26個

◆内容紹介
将棋の正しい指し方をひと言で明快に示したもの、それが将棋格言だ。

本書で取り上げるのは、著者オリジナルの新格言、これまでどおりでは現代将棋に合わないので今流に表現を変えてバージョンアップさせた格言古今不変の格言の3種類。

なかでも新格言は、著者の体験から生まれた知恵の集大成で、応用範囲が広く実戦的なものぞろい。

手筋を簡単に覚えられ、効率よく棋力アップできる一冊。


【レビュー】
将棋の格言を解説した本。

格言とは、将棋の原理・原則に基づいた(とされる)心得のうち、汎用性の高いものを、分かりやすく表現した文言である。特に級位者から初段くらいでは、格言を覚えることによって、さまざまな将棋の指し手の正しさを言語化することができ、上達の助けになりやすい。

ただし、格言は時代によって変化するものもある。将棋の研究が進んだり、流行が変遷することによって、価値観や重要性が変わってくるからだ。

青野によれば、指導対局では多くの人が同じところで間違えており、「同じ基本が分かっていない」と感じたとのこと。また、今では通用しない格言をそのまま覚えていると、道筋を間違えてしまうだろうと。

そこで本書では、格言を3つに分類。青野が創った「時代に合わせた新格言」を12個、従来からあるが修正して表現を変えた「バージョンアップ格言」を12個、さらに今も昔も価値が変わらない「古今不変の格言」を26個と、計50個の格言を解説していく。


基本的なレイアウトは、見開き完結型。格言1つに対し、文章での説明が1p、全体図を用いた例が3つで3pずつとなる。解説は各1pで完結している(複数の例がつながっていることもある)。基本的には指導対局やプロの実戦で現れた局面が使われていて、駒落ちの図もときどきある。中には、プロもうなるような実戦例もある。


本書の各格言を簡単に紹介していこう。(なお、従来からある格言は説明を省略しているものもあります)



◆目からウロコの新格言

●鼻をかむ前にメガネを拭け
(意味)歩を交換されたとき、すぐに歩を打って受けてしまうのではなく、いま手持ちになった歩が何か他に使い道がないかを考えてみる。
・トップバッターがまさかのこれ(笑)。説明なしでは分からないですね。

●攻めの銀は足して奇数の位置に立て
(意味)▲3六銀や▲5六銀など、符号の数字を足して奇数の位置の銀は好位置になりやすいことを意識せよ。
・一方、古くからの格言に「銀は千鳥に使え」というのもあり、▲4八銀〜▲3七銀〜▲4六銀…などのように斜めに使うのを推奨されている。この場合は、足して偶数になりやすい。
・時と場合によると思うが、足して偶数のところばかりに銀を使ってきた人は、一度意識してみるとよい。

●七掛けの桂に高跳びあり
(意味)攻めの桂は、守りの駒の70%くらいの価値(七掛け)なので、何か代償があるならば捨ててもよい。また、守りの桂との交換はハッキリ得である。
・昔から部分的には知られてきたものの、ここ数年で意識が高まった新しい価値観である。言語化されたのは初めてかも?

●七掛けの香なら歩とも交換
(意味)攻めの香は、1歩入手のために捨てるのもあり。
・このような桂や香を捨てる攻めは従来からあったが、「場合によっては」というフレーズであいまいに解説されてきたと思う。汎用性のある格言として、新しい価値観を言語化したのは大きい。

●相手が取れない駒はすぐに取るな
(意味)駒得だからといって、すぐに取らない方が得をすることがある。

●在庫・手形・現金の順で考えよ
(意味)中盤以降は、すぐに持駒の金銀(現金)を使うよりも、盤上にある駒(在庫)の活用や、垂れ歩など(手形=将来に金銀と交換できそうな手)を優先して考えよう。
・これも説明なしでは分かりづらいが、理解してしまえば上達が望めそう。
・青野的には最重要格言の一つ。
・人によっては、在庫=持ち駒、現金=盤上の駒として、現金>手形>在庫とした方が覚えやすいかも。自分の仕事(業種)と照らし合わせて、好きな言葉を当てはめてみよう。

●自玉から遠い駒を先に使え
(意味)玉の周囲の駒はそれだけで価値が高いが、玉から遠い駒は価値を高めるように活用しよう。
・盤上の駒の価値を上げることができれば、その分だけ形勢が良くなる。
・いわゆる「格調の高い手」もこの格言に含めることができそうだ。

●おいしい駒とまずい駒
(意味)大駒を取るのが価値が高いとは限らない。どちらが有用かをよく見極めよう。

●自分の駒は自分のもの、相手の駒も自分のもの
(意味)「質駒(いつでも取れそうな相手の駒)を意識せよ」、または「意図的に質駒を作れ」。
・字面だけを見ると、完全にジャイアン(笑)

●角交換振り飛車は自分から動け
(意味)そのまんま。
・確かに、角交換振り飛車側がずっと待っていると、作戦負けになるイメージがある。

●終盤では一石二鳥の手を探せ
(意味)そのまんま。

●タダと交換の違いを見極めよ
(意味)そのまんま。
(補足)「タダで取られる」と「歩と(他の駒との)交換」はほとんど同じ。また、「香をタダで取られる」と「飛を角で交換で取られる」は、場合によるが「タダ」の方が悪い。



◆今流に修正した格言

●玉は行き止まりに追い込め
・「玉は下段に落とせ」をもっと分かりやすくしたもの。

●敵の逃げたい場所へ打て
(意味)終盤で捨て駒を放って、敵玉の逃げ道をふさげ。

●守りは金銀3枚も、ときには4枚で
・「攻めは飛角銀桂、守りは金銀3枚」という格言があるが、攻めが確保できるなら、「攻めは飛角桂または香、守りは金銀4枚」もあり。
・横歩取りで後手が中原囲いで飛角桂桂で攻める場合や、四枚穴熊で攻める場合などが当てはまる。
・ここ数年の「バランス重視型」の将棋には当てはまりにくい。逆に「攻めは飛角銀銀桂、守りは金銀2枚」くらいのこともある。
・将棋の作りが、堅さ重視なのか、バランス重視なのかで変わってくるので、よく見極めよう。

●王手の八割は悪手
・「王手は追う手」の改良版。効果の薄い王手は控えたい。

●5三のと金に負けはなし、も時による
・昔からある「5三のと金に負けはなし」は、穴熊のような玉が遠い陣形には効果薄となる。
・なお、ここ30年くらいの格言本では同様の解説がされている。居飛車穴熊が猛威を振るった時代と一致する。
・ただし、この5年くらいは、穴熊の価値が下がって、バランス型の陣形が増えているので、「5三のと金に負けはなし」は復活しているかもしれない。

●双方の玉間の山頂は天王山
・「5五の位は天王山」はもはや通用しないが、互いの玉頭には急所がある。その山頂を制すれば、桂香での攻めが厳しくなる。
・居飛車vs振り飛車の対抗形で持久戦調のときには、この格言を意識したい。飛車側で劣勢でも、玉頭戦を制すれば有利になる。

●中合いは歩のマジック
・味方の利きのないところに歩を捨てる「中合い(ちゅうあい)」はしばしば妙手になる。
・飛角香で王手されたときは、中合いができないかどうか、常に意識してみよう。

●角換わり将棋に5筋を突くな、も玉形しだい
・角換わりで5筋の歩を突くと△3九角などを狙われやすいが、玉形によっては5筋と突いた方が攻撃力が増す。
・例えば、右金を動かさない、などで工夫することで△3九角の筋を防ぎ、5筋の歩を突ける。

●持ち歩2枚でも端攻めを狙え
・「3歩持ったら端に手あり」という格言があるが、2歩でも端攻めが成立することが多い。
・1歩や0歩でも、場合によっては成立することがある。

●馬ができるなら飛角交換も成立
・「序盤は飛車より角」を修正したもの。
・基本的な駒の価値は「飛>角」だが、馬ができて、かつ、渡した飛を自陣に打ち込まれない(活躍されない)のであれば、角のほうが良いことがある。

●矢倉囲いは、棒銀に備えて端歩を突くな
・「矢倉囲いに端歩を突くな」を修正したもの。
・棒銀攻めがなければ、端を突いて玉を広くしたほうが良い。

●角道を止めた振り飛車には角交換
・「振り飛車には角交換を狙え」を修正したもの。
・角道オープン振り飛車が広く普及したことに対応している。





◆古今不変の格言
※従来からある格言なので、コメントは割愛します。(一部を除く)

●桂頭の玉 寄せにくし

●金なし将棋に受け手なし

●一段金に飛車捨てあり

●角筋受けにくし

●と金の遅早や

●両王手 受けにくし

●焦点の歩に好手あり

・相手の駒が複数利いているところへ捨てる「焦点の歩」は、さまざまな効果があり、相手もウッカリしやすい。

●攻めるは守るなり

●下段の香に力あり

●両取り 逃げるべからず

(意味)両取りを掛けられたときは、逃げる一手を別の有効な手に回せ。
・ただし、両取りを掛けられた駒の重要度に差があれば、大事な方を逃げるべきである。

●飛車の横利き 受けに強し

●玉の腹から銀を打て

●金はナナメに誘え

●桂は控えて打て

●二枚飛車 鬼より怖し

●玉は包むように寄せよ

●うますぎる手に注意せよ

(意味)良さそうな手にすぐに飛びつかず、よく読みを入れなさい。
・ウッカリ防止の格言は、他に「錯覚いけない よく見るよろし」「四隅の香を見よ」などもある。

●端玉には端歩

●金は引く手に好手あり

●歩のない将棋は負け将棋

●寄せは守備の金を狙え

●金底の歩 岩より堅し

●馬は自陣に

●終盤は駒の損得より速度

●浮き駒に手あり

●香の田楽刺しに威力あり



【総評】
「七掛け」や「在庫・手形・現金」などの新格言は、アマが陥りやすいところながら今まで的確な表現がなかったところなので、これらを分かりやすく言語化してくれたのは非常にありがたかった。説明されないとちょっと分かりにくい新格言もあったが、消化できれば使えるようになるので、これら新格言は◎だった。

また、今流に修正した格言は、従来の格言で分かりにくかったものを表現を変えてあるので、分かりやすい方で覚えればよいだろう。選択肢が増えたことは○。

一方、古今不変の格言も含めて、解説の題材局面がやや有段者寄りで、格言の効果がはっきり現れていないものが多い気がした。格言が特に有用なのは中級〜初段くらいだと思うので、このクラスの人にとっては、解説が呑み込みづらいことがあるかもしれない。各格言の局面例が3つずつあるので、「部分図での例」「アマ初段クラスでの成功例」「高段者〜プロレベルでの例」のように難易度を分けた方が分かりやすかっただろうか。

別の格言本をすでに1冊以上読んでいて、メジャーな格言は知っている、という方には有用な一冊。「初めての格言本」ではないことに注意してください。



【関連書籍】

[ジャンル] 格言
[シリーズ] 
[著者] 青野照市
[発行年] 2020年

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